フリーランスなどの台頭によって自営業が広く認知されつつある一方、世間では「自営業では住宅ローンが通りづらい」といわれることもあります。
実際に、安定したサラリーマンに比べて自営業は不安定と判断されることも多く、審査に落ちてしまう方もいるのが現状です。
しかし、金融機関も鬼ではありません。
自営業であっても融資してくれるところはあります。
今回の記事ではそれら自営業の方が住宅ローンを申し込む際に知っておきたいことを解説します。
特にここでは自営業だと本当に住宅ローンの審査が通らないのか、はたまた自営業はどうやって審査されるのかなど、気になる点について説明します。
また、自営業が住宅ローンの審査に通るための秘訣やフラット35の活用についてもまとめます。
自営業を始めたのは良いものの、住宅ローンの審査が通るかどうか不安という方は、ぜひ最後まで読んで心配を少しでも減らしてみてはいかがでしょうか。
自営業だと住宅ローンの審査は通らないの?
では、自営業だと本当に住宅ローンの審査は通らないのでしょうか。
これに関しては結論を先に言うと、審査が通りにくいのは事実といえます。
ただし、それはあくまでもサラリーマンなど継続して現金収入が入る人と比べた場合に限ります。
自営業であってもきちんと継続して現金収入があるのなら、審査にも問題なく通る場合もあるわけです。
その一方で自営業だと審査が厳しくなるのも事実なので、自営業が住宅ローンを断られやすい理由についても把握しておくことが重要です。
以下、自営業がなぜ審査に落ちやすいのかについてわかりやすくまとめます。
自営業が住宅ローンを断られやすい理由
まず、金融機関で住宅ローンを申し込む際、必ずと言って良いほど審査と呼ばれるものがあります。
そこで本人に適性があるかどうか判断され、金融機関が「この人になら融資しても最後まで返済してくれそう」と判断された場合に限り審査を通過できます。
では、どのような点を見て判断されるのかというと、金融機関ごとに無数の審査項目が設定されており、それら審査項目ごとに判断されるのが普通です。
たとえば、これらの審査は本人の年齢や年収、職場や勤続年数、融資状況や健康状態、借入時年齢や完済時年齢などが審査されます。
なかでも特に重要な項目とされるのが、収入の安定性や継続性です。
仮に年収500万円を数十年ベースで稼げるということなら、金融機関は収入が安定していると判断します。
逆に年収1,000万円であっても翌年翌々年が稼げなくなるということなら、金融機関では収入が安定していないと判断するわけです。
これがまさにサラリーマンと自営業の違いだといえるでしょう。
もちろん、サラリーマンも未来永劫安泰なのかといわれるとそうではないですが、少なくともフリーランスなどよりは安定収入があると見込まれます。
逆に、自営業は収入にも波があるため、調子が良い年は返済も滞りなくできるかもしれませんが、調子が悪い年は返済すらままならないこともあるわけです。
それらの点から自営業は住宅ローンの審査に通りにくいといわれています。
自営業の場合どうやって審査される?
自営業として個人事業主をやっている方はもちろん、会社や企業を経営している方も金融機関の審査は厳しいです。
大原則として自営業の場合、住宅ローンの審査は収入が安定しているかどうかが重要な審査項目となります。
そのため、最低でも3期連続黒字であることが基本となるでしょう。
金融機関に収入の安定性や継続性を理解してもらうためには、最低でも3年度分の黒字報告が必須です。
なかには1期だけ赤字であっても審査に落ちてしまう金融機関があるほどです。
原則は直近3期分の年収を見て判断されるので、その点で勝負することになるでしょう。
ただし、前述の通り住宅ローンの審査はそれぞれの金融機関によって審査基準が変わってきます。
たとえば、単に事業年数を見る金融機関もあり、その場合は事業を開始してから2~3年以上経過していないと審査してもらえない場合もあります。
その一方、安定かつ継続した収入を得ている自営業者であれば審査に通る場合もありますし、返済負担率が基準を満たしていれば審査に通る場合もあります。
このように、自営業の場合であっても金融機関ごとの審査基準を満たすことが必要となるわけです。
逆にいえば、審査項目さえ満たしていれば自営業者でも住宅ローンを契約できる可能性が十分にあるといえるでしょう。
ただし、税金を滞納している場合や他の借金を抱えている場合などは、融資が認められないケースも多いです。
自営業が住宅ローンの審査に通るためには
ここからは自営業が住宅ローンの審査に通るために知っておきたいことを見ておきましょう。
前述の通り、自営業でも住宅ローンの審査に通る可能性はあるといいました。
しかし、それでも自営業はまだまだ審査も厳しい場合が多いです。
そのため、ここからまとめる方法を駆使して、少しでも審査合格の確率を高めましょう。
頭金を増やしてローン比率を下げる
自営業の方だけに言えることではないですが、住宅ローンの審査に通りやすくする王道の方法となるのが頭金を多く用意することにあります。
たとえば、4,000万円の住宅ローンを組む際、そのまま4,000万円を融資してもらうのと頭金を1,000万円用意して3,000万円を融資してもらうのとでは返済負担が大幅に変わります。
これは極端な例ですが、頭金を準備しておけばその分だけ借入額を減らせるわけです。
当然ながら、金融機関も返済負担率が下がれば下がるほど、審査にも通しやすくなります。
さすがに数千万円単位で頭金を貯金するのは大変ですが、夫婦で100~300万円、欲をいえば500万円前後貯蓄しておくだけでも全然違います。
特に自営業で審査に落ちそうということなら、頭金を別途で貯めておきましょう。
現在抱えている借金を減らす
もし現在ほかに抱えている借金があるのなら、そちらを減らしてから住宅ローンに申し込むのもありです。
そもそも自営業者が他に借金をしている状態で住宅ローンを組もうと思っても、審査に不合格となることが多いです。
特に、別途で何かしらのローンを組んでいると、それ自体が返済負担率に影響します。
そのため、現在借金をしている状態なら、まずはそれらの借金を返済してから住宅ローンを申し込みましょう。
代表的なローンとしてはカーローンや教育ローンのほか、カードローンなどもあります。
さらに自営業の場合は事業に関わるローンやそのほかのフリーのローンも契約しているかもしれません。
これらがあるとどうしても足枷となるため、極力は完済しておくのが望ましいです。
もちろん、すべて返さなくても一部で良いので、借金を極力減らしてから住宅ローンの審査に挑みましょう。
自営業に対する特別条件がない銀行を選ぶ
金融機関によっては自営業者に対して特別条件を課しているところもあります。
それこそ事業年数が2~3年以上ないと審査すらしてくれないところもありますし、1期だけでも赤字があれば審査に落ちてしまうところもあります。
その一方、自営業者であっても特別条件なく審査してくれる金融機関もあるのです。
審査の比較的ゆるい金融機関を選ぶことによって、より住宅ローンも契約しやすくなります。
必ずしも審査がゆるくなるとは限りませんが、少なくともサラリーマンと同条件で審査してくれる金融機関もあるため、それらの金融機関を候補として選んでみてください。
特に、事業関連で融資をしてくれる信用金庫や地方銀行などは、比較的、相談に乗ってくれる可能性も高いです。
フラット35を利用する
自営業者の心強い味方とされているのがフラット35です。
フラット35というのは住宅金融支援機構と民間金融機関が共同で提供している住宅ローンとなります。
これらフラット35は通常の住宅ローンと比べて審査が緩く、審査の際に見られる所得も1期分のみとされています。
通常の金融機関では3期分の確定申告書などが必要となるものの、フラット35は1期分だけで良いということです。
それでいてフラット35では事業用融資は借入額に含まれないとされています。
つまり、事業関連で融資を受けていたとしても、返済負担率を圧迫することがないのです。
これはそのまま審査の通りやすさを意味します。
さらにフラット35は団体信用生命保険などへの加入も任意となっているため、総じて自営業者のハードルが低いといえるでしょう。
そのため、もし通常の住宅ローンに通りそうもない場合はフラット35など他の融資についても考えてみてください。
自営業にはフラット35がおすすめ
自営業で通常の住宅ローンを契約するのは、あまり現実的ではありません。
最初からフラット35を選ぶというのも選択肢としておすすめです。
フラット35であれば、前年度の収入と契約の借入額のバランスに問題がなければ審査に通りやすいです。
近年はフリーランスとして開業して、翌年に家を買うという人もいるかもしれません。
その場合、フラット35なら開業して1年未満でも申請可能となっているため、余計なところでつまずくこともありません。
事業年数が1年未満の場合は365日で日割り計算して年収を割り出すため、数ヵ月の収入であっても審査に通る可能性があります。
そういった点から見ても自営業にはフラット35がおすすめだといえるでしょう。
ただし、必ずしもメリットだけではなくデメリットもあるので、次の項目も併せて確認しておいてください。
フラット35利用の場合の注意点
フラット35で契約する場合、いくつか注意点もあります。
自営業者がフラット35を申し込む際の注意点も確認しておきましょう。
1.返済負担率に注意
通常、返済負担率は年収400万円を境に30~35%までと定められています。
これらの返済負担率を超えるような返済計画は破綻する可能性があります。
フラット35では直近の所得で審査が行われるため、一見すると審査に問題なく通過したように思ってしまうかもしれません。
しかし、実際には返済負担率がギリギリで後後になってから返済が困難となることもあるため、慎重な返済計画が必要です。
できれば返済負担率は20~25%、欲をいえば10~15%となるように設定すべきです。
そこはフラット35も通常の住宅ローンも同じですが、とにもかくにも無理なく完済できる返済計画を立てていくことが重要です。
2.融資額に注意
フラット35では物件に応じた金額をそのまま融資してもらえる場合もあるのですが、原則として9割融資とされています。
つまり、本来は4,000万円の融資を受けたくても、実際には3,600万円までしか借りられないこともあるわけです。
その影響で物件によっては少し手が届かないこともあるため、自己資金を貯めておくことも必要です。
ある程度の自己資金があればより一層融資も受けやすくなりますし、返済計画も無理のない範囲で立てていけます。
3.税金滞納に注意
自営業者の中には税金を滞納している人もいるかもしれません。
その場合、融資を断られることがあります。事実、税金の滞納が続けば財産差し押さえが決定し、所有している物件を含めた資産が差し押さえられてしまうことになります。
これら税金による差し押さえはほかの債権者よりも優先されるため、フラット35でも警戒されるわけです。
当然ながら税金の未納もアウトです。
フリーランスになったにも関わらず、確定申告が必要であることを知らない人もいます。
その場合もフラット35は通らないと思っておきましょう。
そもそもフラット35でも通常の住宅ローンでも、自営業者は確定申告書の提出が求められます。
そのため、必ず確定申告をして納税も済ませる必要があります。
4.修正申告に注意
巷では住宅ローンの審査に通ろうとするあまり、修正申告を行って所得を高く見せる手法が出回っています。
たしかに、修正申告によって所得を高くすれば、フラット35などのように1期分の年収で判断する金融機関は騙せるかもしれません。
しかし、虚偽の修正申告は必ず発覚します。
そもそも所得を高く見積もって申告すれば、無駄に税金を払うことにもなります。
そのため、いくら審査に通りたいからといって、故意に修正申告を行うことは避けましょう。
まとめ
自営業の方は住宅ローンも確かに通りづらいです。
それは、サラリーマンに比べて安定かつ継続した収入がないと判断されるためです。
しかし、自営業だからという理由で落とされるわけではなく、きちんと返済計画を入念に立てれば融資を受けられます。
それだけでなく、フラット35など自営業にも優しい住宅ローンが存在します。
自分に合った住宅ローンを見つけるためにも、金融機関選びはもちろん借り入れ方法についても精査してみましょう。
そうすれば自営業であっても住宅ローンを契約することは可能です。