住宅ローンは1つの契約に対して1人で契約するのが基本です。
連帯債務者や連帯保証人の有無はあっても、多くの場合は夫もしくは妻が契約者となって返済していくのが普通です。
しかし、近年は親子リレーローンと呼ばれる借り入れ方法も支持されています。
親子リレーローンとは、文字通り親と子で1つの住宅ローンを返済していく借り入れ方法で、2世代以上で居住する家を建てる際に便利です。
ただ、なかには親子リレーローンについて初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回の記事では住宅ローンの借り入れ方法の1つである親子リレーローンについて解説します。
特に、ここでは親子リレーローンが持つ特徴やメリット・デメリットについて説明します。
うまく活用すれば親と子それぞれで負担を分散させながら返済できるため、より将来設計も進めやすくなるかもしれません。
将来、子どもと一緒に暮らす予定の方はもちろん親の面倒を見る予定の方など、親子で家を持つことを考えているなら親子リレーローンも選択肢に入れておきましょう。
親子リレーローンの概要
まずは親子リレーローンがどのようなものなのかを知る必要があります。
以下の項目で親子リレーローンの特徴とメリット・デメリットについてまとめるので、1つひとつ確認していきましょう。
なお、ここでは親子リレーローンの要件についてもまとめます。
親子リレーローンの特徴
親子リレーローンとは文字通り、親子が同居する住宅において、一緒に住宅ローンを組む借り入れ方法のことをいいます。
これらは一般的に中高年の親と成人した子どもがペアで融資を受け、一定期間は親が返済しつつ、後々、子が返済を引き継ぐのが特徴です。
通常の住宅ローンは80歳までに完済することが条件とされていることも多いのですが、親子リレーローンであれば子が返済を引き継ぐことになるため、親が高齢であっても契約可能です。
さらに、親子リレーローンは新築物件だけでなく中古物件の改修などでも利用できます。
そのため、リフォームや住み替え、借り換えを考えている方も活用できるのが特徴となっています。
親子リレーローンのメリット
親子リレーローンにはメリットもたくさんあります。まずは以下をご確認ください。
以上が親子リレーローンのメリットとなります。
多くの金融機関では中高年となると審査に落ちることもあるのですが、親子リレーローンであれば親子で契約するゆえに審査にも通りやすいです。
それこそ親が高齢であっても子どもが成人しているのなら、審査にも通る可能性が高くなります。
加えて、親子で返済する形式となるため、返済期間を伸ばして月々の経済的負担も分散できるのです。
さらに親子2人で申し込むことで融資額を増額できるほか、親と子それぞれが住宅ローン控除も受けられます。
まさに親子リレーローンはメリット尽くしの借り入れ方法なのです。
親子リレーローンのデメリット
親子リレーローンにはデメリットがないわけではありません。
併せて以下もご確認ください。
以上が親子リレーローンのデメリットです。
住宅ローンなどの高額融資では返済負担率が圧迫されます。
そのため、ほかのローンが組めなくなる可能性も否めません。
返済負担率の上限である30~35%で契約すると、ほかのローンを借りる余裕が失われます。
それでいて、親子で相続する際に揉めてしまうこともあるかもしれません。
さらには税金がかかったり、親が亡くなることで残債が子に降りかかったり、親子リレーローンにはデメリットがあることも忘れではなりません。
親子リレーローンの要件
親子リレーローンで契約するには、当然ながら要件もあります。
以下、親子リレーローンの要件についても確認しておくと安心です。
以上の要件を満たす親子でなければ、親子リレーローンの審査に落ちる可能性があります。
たとえば、親子別々に暮らす場合には親子リレーローンを契約できませんし、親の借入時年齢が70歳を超えていても、子の完済時年齢が80歳を超えていても契約できません。
また、親から複数の子への引継ぎは認められておらず、それでいて返済能力が親にも子にも求められます。
そのほか、契約者のどちらかが団体信用生命保険に加入する必要もあるのです。
親子リレーローンと親子ペアローンの違いは?
親子リレーローンと似たような方法に親子ペアローンという方法もあります。
ただし、これらには違いもあります。
以下、それぞれの違いです。
親子リレーローン | 親子ペアローン | |
住宅ローンの本数 | 1本 | 2本 |
返済のタイミング | 親が先で子が後 | 親子で同時 |
団体信用生命保険 | 親子どちらかが加入 | 親子ともに加入 |
住宅ローン控除 | 親子ともに適用 | 親子ともに適用 |
親子リレーローンと親子ペアローンには以上のような違いがあります。
実際に親子リレーローンは契約が1本ですが、親子ペアローンは2本となります。
それでいて親子リレーローンは先に親が返済して後から子が返済するのに対し、親子ペアローンは親子で同時に返済していきます。
団体信用生命保険に関しても親子リレーローンは親子どちらかが加入(親より子が加入するケースが一般的)するのに対し、親子ペアローンは親子ともに加入するのが普通です。
ただし、どちらも住宅ローン控除を適用できる点は同じです。
親子リレーローンが向いているケース
親が高齢でありながら働いている子がいるというケースであれば、親子リレーローンがおすすめです。
親子リレーローンなら安定した収入のある子どもと一緒に契約することになるため、親が年金生活もしくは再就職生活を送っていたとしても安心です。
金融機関も高齢の親だけだとなかなか融資には踏み切れませんが、安定収入のある子どもも一緒に契約するのなら融資にも踏み出せます。
まさに親子リレーローンは親子で返済をカバーしたいという方に最適だといえるでしょう。
親子ペアローンが向いているケース
親と子の双方が夢のマイホームを作りたいというケースであれば、親子ペアローンがおすすめです。
親子ペアローンなら両者の収入が審査基準となるため、融資額を増やせるだけでなく、お互いに返済を補いながら生活できます。
マイホームに理想を詰め込みたいということなら、親子ペアローンの方が自由に設計できる可能性も高くなります。
特に、収入を合算して審査してもらいたい親子に最適な方法といえるでしょう。
親子リレーローンの審査基準
住宅ローンを組む際、ほとんどの金融機関では審査を行います。
誰にでも融資してくれるわけではなく、金融機関もきちんと完済してくれる人にのみ融資するわけです。
その際、本人の健康状態はもちろん、年収や年齢、職場や勤続年数、昇給や昇格、借入時年齢や完済時年齢など多種多様な項目で審査されます。
これは親子リレーローンであっても同様です。
しかし、通常の住宅ローンが契約者の返済能力を審査するのに対して、親子リレーローンでは子の返済能力を審査することが多いです。
なぜなら、親子リレーローンは最終的に親ではなく子が完済するためです。
根本的に親子リレーローンは親から子へと引き継ぐことを前提とした住宅ローンとなるため、子どもがいかに返済できるかということが重要となってきます。
だからこそ、親ではなく子どもの返済能力を見て判断するわけです。
その際、返済能力だけではなく経済状況なども審査されます。
たとえば、親に内緒で借金をしている場合などは、あまり経済事情が安定しているとは判断されません。
あくまでも親ではなく子の経済事情が加味されるということを意識して審査に挑みましょう。
もちろん、一定期間は親も返済することになるため、両者の返済能力が問われます。
返済途中で親が亡くなった場合には、どうすれば良いのか?
親子リレーローンを組む場合、やはり親が先に亡くなった場合にどうすれば良いのか気になる方も多いはずです。
もしも返済途中で亡くなってしまった場合は、その親の残債が子どもに引き継がれます。
そのため、もともと返済している分に加えて、残債の分ものしかかることになるわけです。
本来の住宅ローンではそれら遺族が生活に困窮しないよう、団体信用生命保険への加入が必須となっています。
しかし、親子リレーローンでは親から子へと引き継ぐことが前提のため、親は団体信用生命保険に入っていないというケースもあるわけです。
そうなると残債を保険金で帳消しにすることもできず、子の負担が倍増する可能性すらあります。
そうなった場合は物件の売却も視野に入れましょう。
ほとんどの場合は数年数十年と経過してリセールバリューも下がってきているはずですが、物件を手放すことによって返済に補填できます。
それでも住宅ローンが残りそうな場合は、金融機関などと相談して今後の返済計画を練り直しましょう。
金融機関も契約者の破産は望んでおらず、ほとんどの場合はどのようにすれば良いのか親身に相談に乗ってくれます。
場合によっては返済時期を延長してくれたり、条件設定を改変してくれたり、何かと対策を講じてくれます。
親子で滞りなく返済できるのが一番ですが、もし問題が発生しそうなら契約中の金融機関に相談するのが一番です。
親子リレーローンを利用する際の注意点
親子リレーローンを契約する場合は、以下の3つに気をつけておきましょう。
親子リレーローンは親と子が共同で物件を所有し、一定期間を先に引き継ぐかたちで返済していく借り入れ方法です。
しかし、不動産の売買や相続、贈与などによって名義変更を伴う場合、税金が発生する可能性があります。
特に、親子同士のローン割合を変更する場合においても、親子間の相続や贈与と判断されるケースがあるのです。
その場合は相続税や贈与税が発生するということを念頭に置いておいてください。
また、住宅ローンにはいくつかの非課税の特例があるのですが、これらは条件次第で適用不可となる場合があります。
たとえば、親が子の返済を肩代わりした場合、資金提供とみなされる場合があります。
そうなると非課税の特例を適用できなくなるどころか、税金が発生することもあるわけです。
ほかのローンを借り入れる際には契約の重複とみなされることもあるので、注意してください。
特に親子リレーローンを組んでいると、仮に親の返済期間中であっても、子どもも返済期間中であると判断される可能性があります。
その場合は他のローンを組めないこともあるので、慎重に返済計画を立てなくてはなりません。
まとめ
住宅ローンの借り入れ方法の一種が親子リレーローンです。
これは親子でリレーのように返済を引き継ぎながら完済を目指す返済方法となります。
特に親子共同で暮らす方でこれから住居を持つ予定の方は、これら親子リレーローンを活用するのも1つの手です。
ただし、親子リレーローンにはメリットもあればデメリットもあるので、そこはどう返済していくべきなのかきちんと計画を練る必要があります。
金融機関も交えて、親子で話し合いをしてからどうすべきかを判断しましょう。
そうすることで両者の負担を減らしつつ、無理なく住宅ローンを組めるでしょう。